連載コラム

浅妻千映子の最新レストラン事情 Vol.09 2018_04_20

~みんなで訪れたい店~

気候も良くなり、やっと花粉も落ち着いてきた。
ゴールデンウイークや5月は、なんとなくみんなでワイワイ集まりたくなる時期だ。

最近は、気になる店を当たっても、何週間も(時には何か月も)前に予約しなくてはならないとか、急に思い立っても、5人6人となると席がないなんてことが、当たり前のようにある。

絶対的に店当たりの席数が少ない東京のレストランだが、今日はまず、席数100という、4月23日にオープンの大注目の新店を紹介したい。

場所は表参道。骨董通りをちょっと入ったところ。敷地面積260坪。
空間に柱は一本もなく、天井も高い。新築だという。ということは、少し前までこんな空き地があったのかと不思議なほど、贅沢な広さをもつレストランだ。

そしてなんと。
シェフは山田宏巳氏。波乱万丈人生を歩んできた、あのイタリアンシェフである。

バブル世代の方はご存じだろうが、昔、原宿に「バスタ・パスタ」という店があった。時代を作った初代シェフがこの山田氏だった。完全オープンキッチンで、劇場型という、今でこそ珍しくないこのスタイルは、まさにあの店から始まったのだ。

この新しい店、「テストキッチン H(エイチ)」も、完全オープン型のキッチンを備えている。しかも、ものすごく大きい。テストキッチンという店名がついているが、そんな規模ではない。これはもう、キッチンスタジアムだ。ちなみにバスタ・パスタとデザイナーも同じだという。

山田シェフが、「今できるすべてのことをした」という通り、キッチンの設備は最新だ。他の新しいレストランの厨房で見たあの機械、あそこで見たあのシステム、あらゆるものが揃っている。

そんな中で、一番驚いたのは、裏口にあるゴミ箱。ゴミ箱と言っても、引き戸になった、ちょっとした物置みたいな大きなものだ。
この規模のレストランともなれば、出る生ごみの量もすごいだろう。それをおさめるこのゴミ箱、なんと、冷蔵庫になっているのである。夏場のあの嫌な臭いも心配ご無用というわけ。

ゴミ箱が冷蔵庫……! これにはさすがにみんながたまげた。シェフも自慢げに微笑む。
ここまでくると、例えば海外の料理人たちも、この空間と設備を見るためだけに来日したいと思うだろう。

料理のコースは、5800円からあると言っていた。100席あるから、人気になっても、そこまで予約困難にはならないはずだ。なんといっても、10人で訪れてもぎゅうぎゅうな感じが全くなく、通路まで広々していて気持ちがいいのがいい。
キッチンを見ているだけでも楽しいし、蕎麦屋さながら、おかもちで出前のように席まで運んでくれる料理があったり、山田シェフの茶目っ気のきいた演出も楽しい。
お披露目の日には、出来立てのハムや、パスタにはペンネアラビアータなどが出てきたが、シンプルで力強い料理はどこか懐かしく、さすがツボを得ているという美味しさだった。

とにかく、一度は訪れる価値がある店だ。大勢で訪れれば、盛り上がりも倍増だろう。

ベテランシェフのイタリアンと言えば、皆さんご存知の日髙良実シェフ。「アクアパッツァ」も、外苑前に場所を移し、80席という大箱で4月20日に新たなスタートを切る。

この二人の新店が、イタリアンにまた新たな風を呼び込みそうだ。

さて、ほかにも大勢で訪れて楽しそうな店を挙げるなら、本校すぐ近くのビストロ「ブノワ」はどうだろう。アラン・デュカス氏が手掛けている、雰囲気のある店で、少し前に改装もした。いうまでもなく、サービスはきめ細かい。10人の集まりだって、余裕で対応してくれる。ダイニングのみならず、お化粧室にいたるまで広くて心地よい。

そしてなんとここでは、毎週日曜(3連休中日となった場合は除くそうだが)、リストの8000円以上のボトルワインが半額となる。これは嬉しい。他にも、毎月20日をワインの日としており、すべてのボトルワインが30%オフだという。

せっかくだもの、こういう情報は上手にとりいれて楽しみたいものである。


■テストキッチン H
https://www.facebook.com/Test-Kitchen-H-%E3%83%86%E3%82%B9%E3%83%88%E3%82%AD%E3%83%83%E3%83%81%E3%83%B3-%E3%82%A8%E3%82%A4%E3%83%81-189335155008423/

■アクアパッツァ
http://www.acquapazza.co.jp/newrestaurant.html

■ブブノワ
http://www.benoit-tokyo.com/restaurant/