連載コラム

遠藤利三郎の「読むワイン」~利三郎文庫便り Vol.07 2018.02.16

「小倉藩葡萄酒事情」を読む。

最古の日本ワインはいつ造られたか。
その歴史が大きく書き換えられた。

大航海時代、新世界にはキリスト教とともに
ワイン造りも伝わった。
ご存知のようにワインはキリストの血であり、
最も重要な儀式であるミサに
ワインは必要欠くべからず存在であったからだ。

1549年フランシスコ・ザビエルにより
日本にもキリスト教はもたらされた。
そう、ワインとともに。
土地の有力者らに献上されたワインはさておき、
ミサで使われるワインはどのように工面したのか?
当初は海外から持ち込んだワインを使用していただろうが、
16世紀の輸送事情を考えれば、自ずと限界はある。

見渡せば日本にはヤマブドウがあるではないか。
宣教師たちはワインの造り方を知っている。
ならばヤマブドウからワインが造られたとしても
なんら不思議はないではないか。

ところがそれを語った文献がないのだ。
その後キリスト教が禁教となり
江戸幕府による過酷な弾圧されたため
関連文書は廃棄され、
その記憶は語られることはなく
闇に埋もれてしまったのだろう。
キリシタンによるワイン醸造の立証は諦めていた。

だが、あったのだ、
それを証明する文献が。
この小冊子の中で著者が明らかにしているのは
1628年に小倉藩主細川忠利の命により
ヤマブドウからワインを造ったという記録だ。
明治維新より遥か240年前に
まさに日本でワインが造られていたのだ!

この小冊子はワイン仲間の小川 研次氏が
小倉藩葡萄酒研究会を立ち上げ、
ワインを中心に小倉のキリシタンの歴史を追ったもの。
古文書との格闘の末に
まとめ上げた小川氏に拍手。

題名:小倉藩葡萄酒事情
著者:小川研次
出版社:小倉藩葡萄酒研究会
(自費出版)




「シードルの事典」を読む。

日本のシードルも
いつの間にやら随分知らない銘柄が
増えているなと思っていたら
この本では国内83社ものシードルが紹介されていた。
増え方が日本のワイナリーどころではない、
凄まじい勢いだ。

飲んだことのないシードルが多いなあ、
全部飲んでみたいなあ。
83種類くらいだったら、
片っ端から試飲できるな。
全種類を揃えて
勝手にこの本の出版記念試飲会などを
企画したら楽しそうだな。。。
などと妄想に走る。笑

この本、国産シードルのガイドブックとして重宝な一冊だ。

題名:シードルの事典
監修者:小野司
出版社:誠文堂新光社