連載コラム

連載コラム:伊東道生の『<頭>で飲むワイン 』 Vol.13 2012.05.20

大統領とシャンパーニュ

フランスの大統領選挙が行われ、4月22日の第一回投票の後、5月6日に、オランドが決選投票の末、勝利しました。フランス第五共和政の7番目の大統領となりました。第五というからには、その前に第一から第四共和政まで、あるわけです。
第一共和政は、フランス革命後の体制です。それからナポレオンがでてきて帝政となり、ナポレオンが敗れると、王政復古restauration(パリで時代祭を行ったとき、明治維新が「王政復古」と記された看板を持っていたのを見て、不思議な感じがしたことを覚えています)がおこなわれ、ルイ18世が即位しますが、また革命の後に、七月王政になります。しかし、1848年二月革命をへて、第二共和政が始まります。
その後、ナポレオン三世がでてきて第二帝政。この時期に産業も発達し、パリの改造が行われ、パリ万博にあわせるようにボルドー格付けが行われます。ワインが、産業社会のなかで一級、二級と規格化し、商品化する時代です。ナポレオン三世は、譜仏戦争でプロシアに負け、やがて第三共和政がはじまります。
そして第二次大戦となり、ナチス政権に親和的なヴィシー政権を経て、戦後はナチとヴィシー政権への抵抗を呼びかけたド・ゴールのもとに第四共和政がはじまります。しかし、アルジェリアの独立戦争の混乱が起き、再びド・ゴールが呼び戻されます。1958年のこの時から第五共和政がはじまります。アルジェリアの民族自決を認めたド・ゴールは右派からねらわれます。そのエピソードがフォーサイスのスリラー小説『ジャッカルの日』(1971)(映画も1973年にできました)です。
ド・ゴールの後が、ポンピドー(パリにある現代美術館の名前にもなっています)、ジスカール・デスタン、ミッテラン(新凱旋門やルーブルの前のガラスのピラミッドなど、パリの改造をしました。)、シラク、サルコジ、そしてオランドとなります。
共和政république(仏)、 republic(英)は、ともにラテン語の res publica からきています。もともとは、古代ローマ共和国を指し、君主制や専制と対立する概念でした。フランスでも帝政が崩壊すると、共和政が現れる、という繰り返しです。

大統領選は、ワインにも関係しました。ワイン雑誌La revue du vin de France 4月号でも、大統領候補者に、ワインについてインタビューが行われています。候補者は10人にいて、主立ったメンバーにインタビューしていますが、オランド曰く。-フランス産の葡萄を植える権利を守り、フランスワインの危機を防ぐことが、われわれの産物を世界にひろめることにつながる。革命と人権宣言の国らしく、葡萄栽培も「権利」だそうです。
 サルコジ氏は、ワインは飲まないが、それについて語るすべは心得ている、と。エリゼ宮には、一世紀前からのあらゆるグランヴァンが保存されているが、ソムリエによって方針が決まる。私がここに来てからはbioワインも入れている。フランスワインは、コンヴィヴィアチティの性格を持っているはずだが、アングロサクソンの影響で若者たちには、それがなくなっている、と。コンヴィヴィアチティconvivialité は、現代社会論でもキーワードの一つで、会食、同じ釜の飯を食うことですが、社会的ネットワーク、共生などの意味合いを含んでいます。

 ところで、サルコジ・シャンパーニュがあるのをご存じでしょうか。前回2007年に大統領になったときにできたようです。


※参照サイト/
調べてみると、シラク大統領にもありました。


Maison Pierre Mignon "Grande Reserve" Cuvée Jacques Chirac
※参照サイト

製造は、Maison Pierre Mignonです。 14 hectares で、 Le Breuil, Dormans (Vallée de la Marne), Cuis (Côte des Blancs), Monthelon (région d'Épernay)に広がり、葡萄は、pinot meunier (60%), pinot noir (10%), chardonnay (30%)です。手摘みで、年間390 000 本だそうです。またエチケット(ラベル)は、好みのものを作ってくれるようです。
※参照サイト


Pierre Mignon Cuvée Prestige 3eme Millenaire "Général de Gaulle" Millesime Produit Exclusif Non
※参照サイト

ド・ゴールといえば、現在アカデミー・デュ・ヴァンで売り出しているDrappierにも、ド・ゴール・シャンパーニュがあります。


Drappier Cuvée CHARLES DE GAULLE

第二次大戦の処理のために、連合国側がいろいろと会談をおこないます。ド・ゴール(フランス)、チャーチル(イギリス)、ルーズヴェルト(アメリカ)、スターリン(ソビエト)等が主人公です。
Pol Rogerの Cuvée Winston Churchill は有名ですが、ルーズヴェルト・シャンパーニュやスターリン・シャンパーニュを作れば、戦後処理シャンパーニュ・セットとして売り出せそうです。