連載コラム

連載コラム:伊東道生の『<頭>で飲むワイン 』 Vol.70 2017.04.23

RVFガイド2017年版

 Revue du vin de France誌が毎年出しているガイドの2017年版が出ました。これまでとは装丁、活字や表示が一新しただけでなく、内容も少し変更を加えています。執筆陣は、2000年の世界ソムリエであるOlivier Poussier等10人。
 地域別ワイン評価の前に、いくつかの情報を掲載しています。
 まずは、フランスの101の酒屋Caviste-お小遣いでも購入でき、セレクションが素晴らしい-を地域別に掲載しています。ちなみにパリでは、ルグラン(Legrand)やタイユヴァン、私の行きつけLa Grande Epicerie de Parisなど12店舗が挙がっています。観光、ビジネスで行かれる方もおられるでしょうから、名前を挙げておきます。Lavine、Nysa、 Philovino(名前がいいですね。 philosとはギリシア語で「愛」を意味します。「ワイン愛」という名前です。しかもphilosophie「哲学」を連想させて、深淵な響きも。sophiaは知という意味で、もともと哲学は「愛知」を意味します。)、Quinze Vins、Rist Dupayron(グラン・エピスリーの近くです)、Cave Auge、Bordeauxthèque(文字通りボルドー一辺倒)、Les Crus du Soleil(「太陽のクリュ」という名前から連想されるようにラングドック=ルーションが得意)、Caves Petrissansです。古酒が得意なVins rares Peter Thustrupはお値段が高いからでしょうか、掲載されていませんでした。
 続けて、Lavini、Idealwine、Millésimaなどのインターネットのお勧めサイト。ネットでの購入はいささか難しいのでこれは省略します。
 次に、た2017年注目株のの各地方のワインのスターが挙がっています。おなじみのドメーヌも多いですが、とりあえず今年(も)注目のドメーヌです。アルザスはdomaine André Ostertag、ボジョレーはdomaine Mee Godard(オレゴンでの経験を経て、2013年から葡萄栽培を始め、モルゴンに5haを所有、注目株だそうです)、ボルドーはChâteau FonroqueのAlain Moueix(写真付きなのですが、アランも年をとりました)、ブルゴーニュはÉtienne SauzetのBenoît RifaultとÉmile Boudot。シャンパーニュはGossetのJean-Pierre Cointreau。コルシカはMuriel Giudicelli。ジュラはdomaine Andr é et Mireille TissotのStéphame Tissot。ラングドックからはdomaine Peyre-Rose、domaine Les AurellesからMarlène SoratpBasile Saint-Germain。ロワールはAlphionse Mellotとその息子。プロヴァンスはClos Sain-JosephのConstance MalengéとRoch Sassi。ローヌはClos du Mont-OlivetのThierry Sabon。ルーションはOlivier Pithon。サヴォワはdomaine des ArdoisièresのBrice Omont。南西地区はdomaine Camin-LarredyaのJean-Marc Grussauteです。2017年だけでなく、これからもこれらのドメーヌは注目ですね。
 また15ユーロ以下の赤・白ワインが地方別に50種ずつ挙がっているのは実用的です。17点が最高点で、白ワインはロワールのVincent Cailléとdomaine Pierre Luneau-Papinのミュスカデが、赤ワインもロワールのdomaine La Roche des Violettesのトゥレーヌが挙がっています。
 さて、メインとなる地域ごとの恒例のドメーヌの格付けです。最近の風潮を反映して、各地域のエノトゥーリズム情報-泊まれるドメーヌ、レストラン、酒屋、ワイン祭り-を掲載。肝心の中身ですが、これは通常通り、星なしから三つ星で、3000以上のドメーヌが格付けされています。有名どころのボルドー、ブルゴーニュ、アルザス、シャンパーニュ、ローヌ以外の地区の三つ星を紹介します。
 まずロワール。著名なドメーヌも多いので、ここは名前だけ。Clos Rougeard(ソーミュール)、Alphonse Mellot(サンセール)、Des Roches Neuves(ソーミュール)、Didier Daguneau(ピュイ=フュメ)、Du Clos Naudin、François Chidaine(いずれもトゥレーヌ)、Huet(ヴーヴレイ)です。
 次にめざましいコルシカ。domaine Comte Abbatuci。ビオディナミを行っているこのドメーヌはコルシカではじめて三つ星を獲得。ここではVermentino種でつくる白ワイン(CollectionGénérale de la Révolution 2014)が高評価です。ただし65ユーロもします。白ワインは他にもありますが30ユーロとかで、それなりに結構なお値段。赤はNieluccio種とSciacarello種です。Ministre Impérial 2014も65ユーロ、トスカナ・ワインを少々彷彿とさせる、と。コルシカはビオロジックやビオディナミがかなり普及していて、そのおかげ(?)で評価が全体に上がっています。Antoine Arena、Clos Canarelli、D’E Croceと二つ星ドメーヌも。
 ジュラの三つ星ドメーヌは、Jean Macle(シャルドネ種とサバニャン種で、白ワインのみ。Château-Chalon 2008は18点という高得点)、Jacques Puffeny、さらに2017年のスタートして上にも挙げたAndré et Mireille Tissot。
 ラングドックでは、三つ星のLes Aurelles。このドメーヌのCoteaux du Languedocは赤も白も高評価。またルーサンヌ種の白ワインは60ユーロもします。他には、おなじみのMas Jullien、Peyre Rose。ここもいずれもビオロジックかビオディナミ。ルーションはGaubyが三つ星。ビオロジックで、IGP Côtes Catalanesは18.5点ときわめて高いですが、72ユーロ。強気です。
 プロヴァンスの三つ星は、Tempier。今現在、Bandol地区のモデルとなっているこのドメーヌは、もちろんBandolの白と赤、とくに赤ワインが高評価45~59ユーロ。
 最後に南西地区。個人的には注目していますが、あまり輸入されないので残念です。Camin Larredya、ジュランソンのドメーヌで、Jurançon Au Capcéu 2014は18.5点ときわめて高評価ですが、24ユーロ。良心的です。三つ星はこれ一つですが、せっかくですから、二つ星ドメーヌも紹介します。Château du Cèdre(カオール)、MIchel Issaly(ガイヤック)、Les Jardins de Babylone(「バビロンの庭」というなんとも面白い名前、古代メソポタミアのバビロン王朝、バベルの塔の伝説を彷彿とさせます。デディエ・ダグノーの所有です)、Plageoles(ガイヤック)、Château Tirecul la Gravière(モンバジャック)、Clos Triguedine(カオール)。いずれもほぼ30ユーロ以下の良心的なお値段。是非、試してください。ガイヤックやモンバジャックはトリュフと合わせるのが、地元の定番です。
 さて、RVFの本誌では、近づく大統領選を前に、候補者の7人に、政策を含め、ワインについての考えを聞いています。先日もお伝えしましたように、スペインをはじめとする輸入ワインに対して、葡萄栽培者たちは抗議デモをしています。またこの記事では、そうした攻勢にさらされ、ドメーヌが税金などの負担で、子供たちに譲るのが難しくなっている状況に焦点を当てています。ワインに関してもEU維持派か、EU脱退、フランスの伝統を守る派かに別れ、やっかいなことになりそうです。シャンゼリゼでのテロなどを考えると、アメリカの二の舞になりそうで憂鬱です。