連載コラム

連載コラム:伊東道生の『<頭>で飲むワイン 』 Vol.85 2018.07.06

~2017プリムール~

今月のRVF誌は先月のボルドー・プリムールに続いて、フランス全体のプリムール評価の特集です。全土にわたる悪天候にもかかわらず、そこそこの評価です。(もっとも、低評価は売り上げに響くので、悪し様には書けないですが。)そこでどういう表現で評価するかがポイントになります。前回ではボルドーに関して「クラシック」という表現を使っていましたね。-2015年や2016年には劣るがむしろ成功し、うまくいった。充分な水準のワインを生産している-等など、歯切れがいいとは言えませんが、書き手も苦労していることが伺えます。ワインの質は別として、実際に数値として出てくる生産量については、ごまかしはききません。「量に関しては、質とは別の話」と前置き、「全体的に僅かな量」と。

また苦戦しながらもなんとか持ちこたえたビオ生産ですが、RVF誌では10のビオディナミのグラン・ヴァンをあげでいますので紹介します。Marcel Deiss(Alsace Altenberg de Berghaime 17-18点)、Albert Mann(Alsace Schlossberg 15-16.5)、Delesvaux(Coteau de Layon Les Crus 17-18)、Clos Saint-Vivant(Provence Bellet 16-16.5)-ここまでが白。赤は、Gobaude-Guillot(Pomerol 15-16)、Pignier(Cotes du Jura Trosseau 16.5-17)、des Roche Neuves(Saumur-Champigny Les Memoires 18-19 果実のエネルギーとヴァイタリティに溢れているとかなりの評価です。)、Clau de Nell(Anjou cabernet franc 16-16.5) 、M.Chapoutier(Chateauneuf-du-Pape Barbe Rac 17-17.5)、Crosse-Maisonneuve(Cahors Les Laquets 17-18) 以上です。

ざっと見て、フランス全土で悲惨ななか、コート・ド・ニュイだけは2009年以来の出来だそうです。シャブリも高評価で、18点以上が7ドメーヌ、雑誌では14のドメーヌが保存しておくべきワインを生産、と評価しています。まあ、ここでも「熟しながらフレッシュで、クラシック」という言葉が見られます。量の低下は否めませんが、18点以上の7ドメーヌをあげておきます。Jean-Paul et Benoit Droin(Les Clos), Drouhin-Vaudon(Les Clos),Moreau-Naudet(Valmur)以上が18-19点という高評価。Jean-Paul et Benoitは、Grenouilleがさらに17-18点。あと同得点はDuplessis(Les Clos),Christian Moreau Pere et filsそして最近めざましいLa Chablisienne(Chateau Grenouille)いずれも。50ユーロ台で、複数本の購入はできそうです。

コート・ド・ニュイは、「グラン・クリュ陛下」というご大層な見出しですが、19点以上が13ドメーヌ、18点以上は37もあがっています。ここは三桁のお値段が100ユーロ台ではありますが、ずらり。ただし、2015年や2016年と異なり、天候のおかげで、ばらつきがあるようです。トップの6つをあげておきます。Perrot-Minot (Chambertin Clos de Beze)-力強く、カレイドスコープの味わいと(どんなんや!? Chapalle-Chambertinもあがっています。こちらは19-19.5点です。)David Duband Francois Feuillet(Chambertin),Des LAmbrays((Clos desLambrays),De La Vougeraie(Musigny)-以上の4つが19.5-20というハイレベル。Clos de Tart, De L'Arlot(Romanee-Saint-Vivant),Perrot-Monou(Chapelle-Chambertin)が19-19.5点です。ボーヌの方は、それほどでもなく、赤についてはPacalet(Corton)が18.5点で最高。但し、白はD'Auveney(Batard-Montrachet,Criot- Batard-Montrachet)はなんと20点満点。「モンラッシェの他のいかなるワインもこの水準には届いていない桁外れ」なワインと絶賛です。とはいえ、他のさまざまなモンラッシェ類も18点台と高水準です。

さて、それ以外の地方毎の評価を見ていきます。地域全般の評価記事とは別に、20点満点でセパージュ毎の評価、保存のポテンシャルが評価され、簡単なコメントも付されています。

まずアルザス。上の二つの評価の順で紹介します。白はGCとLiux-ditsのRiesling がよく、17点、Riesling,pinot gris, pinot blancの甘口は15、赤も15点。つまり、リースリングだけはうまくいったようです。保存のポテンシャルも18点、あとは14,15点止まり。アルザスは日本ではいまいち人気がありませんが、そのためコスパのいい優れたワインがたくさんあります。上に挙げたMarcel DeissやAlbert Mannもまだ「買える」値段です。10年後を楽しみに購入ということもしてみてはどうでしょうか。

ボジョレー。質は15点、保存は14点。ただし、BrouillyとMorgonは比較的いいようです。

ボルドーに関しては、「プチ」、つまり「グラン・ヴァン」にはなれなかったというタイトル。ただメドックの北は勝利!と。ここは前回も触れたので、今回は、おすすめワインを紹介します。

ざっと見て気づくのは、多くの有名シャトーが白をだして、その評価も載るようになったことです。ちなみにMargaux(Pavillon blanc)が16-17点。Cos d'Estounel, Lynche-Bage(これは45ユーロ)が16-16.5点。Moutonが15.5-16.5点。Talbot(27ユーロ)は15-16点。Cantenac Brown(20ユーロ)は15-15.5点です。こういった白ワインは、どこまで熟成するのでしょうかね。

右岸のみお薦めワインが載っています。Le Petit Cheval(おじいさんのCheval Blancは5000本程度という数量。プチは今年お祖父さん似だそうです。)Pierre 1er (雹におそわれたがFogeacあたりではうまくいった)あとは、Corbin Michotte(以上がサンテミリオン)、Gombaude-Guillot,Tour-Maillet(ポムロール)。

さて、全体としての評価です。赤の質と保存ポテンシャルは16点と15点。白が16.5点と16点。甘口は17.5点と17点です。プチ・ダネですので、早飲み、安いものをチェックということです。

ラングドックも生産減ですが、質はけっこう、よかったもよう。赤の質は18点、保存のポテンシャルは17点。それに対して、白は16点と15点。なかでも Les Terrasse du Larzacの赤が高評価です。ルーションは赤は17点、16点、白は15点、16点、甘口はともに16点です。IGPにあたるMauryの赤がいい出来です。

続いてロワール。赤は16点と17点。白は質と保存ともに15点。甘口は15点と16点。ロワールではカベルネ・フランが好調だったようです。地区としてはChinonとBourgueil。

プロヴァンスは30%も資産が落ち込みました。赤は16点と15点。白は14点と13点。ロゼは評価にはいっていません。

南西地区は赤は16点、15点(とくにカオールはよい。例えばCosse Maisonneuve 17-18点)、白は15点、13点(IrouleguyのArretxeaは18点)、甘口はともに17点です。

最後にローヌ。赤は質、保存共に18点と高評価。白はともに16点。甘口はともに16.5点。赤に関しては、とくに北部がよかったようです。Hermitage, Cote Rotie.またChateauneuf-du-Papeは赤も白もかなりの高得点です。Chateau Rayas(赤白ともに19.5-20)、Jerome Gradassi(赤は18-18.5、白は18点)が筆頭です。

といった具合です。生産減のおかげで、ワインの値段も期待ほど下がらないでしょうね。とくにシャンパーニュでのリザーヴ・ワインが心配です。次の号は、プリムールがよかったChateauneuf-du-PapeとCahorsの特集になります。夏も近いので、毎度おなじみプロヴァンスのロゼも。

さて、最後に先月の記事、アンリ・ジャイエの遺産ワイン-855本の普通瓶と209本のマグナム・オークションの結果を少々。ロット番号106が1978から2001年のCros-Parantouxが15本でした。評価額は23万7千ユーロから40万6千ユーロ。それが100万ユーロを越えました。ロット番号135- Cros-Parantoux,1999がマグナム6本。評価額は9万3230ユーロから18万6450ユーロ。これは45万7285ユーロで。ロット212-1986年のRichebourg 1986,-評価額は6 780から13 560ユーロ-これは43 700ユーロ。総額は評価額としては570万から1120万ユーロ。実際は2980万ユーロになりました。もはや飲み物の値段ではありえない!!甥のエマニュエル・ルジェはジャイエのワインを投機対象にするなと叫んでいますが、果たして・・・。