連載コラム

連載コラム:伊東道生の『<頭>で飲むワイン 』 Vol.95 2019_04_05

~フランスのワイン(2)とラングドックの白~

前回に続いてRVF誌のvins de France(VDF)特集の続きをはじめに。

今回、最初に取り上げるVDFはアルザス。ボクスレ、マルセル・ダイス、ヴァインバッハと並ぶ三つ星の作り手Domaine Zind-Humbrecht, Zind 2016です。クレマン・ダルザスにシャルドネが用いられることがありますが、こちらはシャルドネのスティル・ワイン。泥炭・石灰の土壌に植えられ、テロワールを反映したワインです。1987年から88年の冬、Leonard Humbrecht氏が友人のVincent Leflaive氏と連れ立って散歩中、ルフレーヴ氏が突然「この石灰質の地に、すぐシャルドネを植えよう」と叫んだとか。それまで植えられていたピノ・ブランに加え、1.3haのシャルドネ、0.7haのオーセロワを植え、2001年までにこの三種を合わせてPinot d’Alsaceという白ワインをつくりましたが、シャルドネはアルザスAOP外なので、VDFもしくはクレマン用のワインとなりました。最北のシャルドネでしょうか。15点~17点と高評価です。

次はジュラから二つ。最初はDomaine des Miroirs Mizuiro 2014。「水色」に、ドメーヌ「鏡」(=Miroirs)ということで、日本人の作り手である鏡健二郎氏が、Jean-Francois Ganevat氏の協力の下につくったワインです。ネットに紹介が載っていました。http://vinaiota.com/producer/1123 シャルドネ、サヴァニャン、プールサール、トゥルソーとオーソドックスなジュラのセパージュを植えています。将来Cotes du Juraを目指しています。続いて、ジュラのビオディナミの先駆者Domaine Pignier A table avec Leandre 2014。ジュラAOPで認められているプールサール、トゥルソー、ピノ・ノワール以外に、混成栽培している11種のジュラの古いセパージュを混合しているため、VDFになっています。14点を中心に11点から14.5点。

コルシカのワインはめったにお目にかかれませんが、高評価なので挙げておきます。コルシカ最も評価されるドメーヌの一つDomaine Comte Abbatucci Ministre Imperial 2016。ここでは伝統的セパージュの膨大なコレクションを所有し、ワインを生産しています。そのなかで土着のAOPで認定されていないセパージュを使っています。16点から17点。Antoine-Marie Arena San Giovannni 2016もコルシカで有名な自然派ワインの作り手によるもの。CarcoならばAOPセパージュですが、これもmorescione、carcaghjoluとフランス語ではないような(コルシカはフランス領ですが独自文化で、イタリアに近いところもあります)、発音できないセパージュです。それらも、いずれAOPに認められるでしょう。15点から主に16~17点。

他にこういうワインも取り上げられています。

Causse Marine, Causse Toujurs 2016
ガイヤックのテロワールを生かすプルネラールとシラーを使っています。

Chateau Plaisance Cruchinet 2016
南西地区フロントン。粘土石灰質で沖積段丘に植えられたシュナンがフロントンのテロワールを反映しています。

Domaine Danjou-Banessy Supaernova 2017
大仰な名前がついていますが、ルーションのミュスカ(muscat d’Alexandrie)を使用したワインです。

Domaine Leon Barrel Blanc 2016
ラングドック=ルーションのフォジェール。テレ・グリ、ブランに、ヴィオニエ、ルーサンヌと地のセパージュですが、赤ワインではないのでVDFです。 

意外なセパージュで高評価なのがミュスカでのピノ・ノワール。Domaine Bellevue Pinot noir Statera 2016、15~16点です。メルロもあります。Merlot Ornate 2016。ミュスカではフランスの北部ですが大西洋の暖流が効いています。
17点が最多ですが、それ以上もあり、この特集で最も高い評価のワインがジュランソンのCamin Lrredya, Iranja 2016。2015年は20点でした。プティ・マンサンを使った、いわゆる「オレンジ・ワイン」です。

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さて、話は変わって、今月のRevue vu vin de France誌の特集は、ラングドックの白。赤ならともかく、白はあまりイメージがわきません。例えば、2017年では白の生産量は10%で、おまけに栽培者は、自由にワイン作りをするために、IGPやVin de Franceのカテゴリーにするので、日本にはあまり入ってきませんからね。一応表題は、ご大層ですが、「ラングドックの白-新時代、葡萄畑にはグラン・ブランに育つテロワールとセパージュがある」、と。私などはMas de Daumas Gassacがパリのワイン店で盛んに売り出していたとき、ラングドックでこんなワインがあるのだ、と強い印象を受けた記憶があります。1980年代ですから、大昔です。赤はボルドー由来のセパージュで、南仏のラトゥールとか言われていた気がします。しかし注目したのは白で、プティ・マンサンとヴィオニエ由来の香りと甘味がフォワグラに合うと、よく飲みました。何故か、シャルドネ、ヴィオニエ、ソーヴィニヨン・ブランの白ワインは、ドイツ人や北欧人に好まれるそうです。これも少し甘味を感じるからでしょうか。個人的な話はともかく、この膨大な地域の、わずかばかりの白ワインをどうやって、評価するのか―Revue vu vin de France誌では、まず3つのスタイルがある、ということです。marsannneやrousannne、grenacheを使うローヌ・タイプ、clairetteやvermentinoを使う南仏タイプ、garignannやterre-bourret、picpoulといった土着のセパージュを使うスタイル、しかし土壌の違いがあるので、スタイル別と言うよりも、オーソドックスに地域別で判定、4つの基準を設け、そこにスタイルを再発見する、と七面倒くさいことをしています。評価は、結局地域別で載せていますので、それを優先します。17点が最高点で、100の白ワインが評価されています。

地域別の最初は「海岸地域」―西はFitouからLa Clapeを経てPicpoul de Pinetにいたる地中海沿岸です。Chateau Peche Redon, La Centauree 2014(17点)、La Croix Gratiot,Picpoul de Pinet Brechaullune 2016(15.5点)、Mas de Caprice Corbieres B. to B. 2016(15.5点)これらはいずれもビオまたはビオディナミです。

次は、海岸から少し内陸に入った地域で、CorbieresからLanguedoc Gres de Montpellierに至る広大な地域です。海抜100から300メートルまでの高度に当たります。Domaine Peyre Rose, Coteaux du Languedoc Oro 2000(17点)、Domaine Les Aurelles, Coteaux du Languedoc Aurel 2014(16.5点)、Domaine Vaisse, IGP Herault Hasard 2017(16.5点)、Roc D’Anglade, IGP Gard 2016(16.5点)、Domaine Leon Barral. Vin de France 2016(16点)、Domaine de la Prose, languedoc Les Embruns 2010(16.5点)。

三つ目の地域は、さらに内陸に入った、海抜150から400メートルのやや高地。とくにPic Saint-LouptpとTerrasses du Larzacが特筆すべきワインを生産しており、優良な生産者もたくさんいます。Clos Maia, IGP Pays de Herault 2011(17点)、Domaine du Pas de L’Escalette, Lamguedoc Mas Rousseau 2017(17点)、Clos Centeilles, IGP Cotes du Biran, C de Centailles 2016(16.5点)、Clos Marie, Languedoc Manon 2017(16.5点)、Domaine D’Aupilhac,Coteaux-de Languedoc,Les Coclieres 2017(16.5点)、Mas D’Espanet, Languedoc Cmille 2016(16.5点)、Mas Foulaquier, IGP Saint-Guilem-le-Desert, Chouette Nlanche 2016(16.5点)。

最後は西のLimouxあたりで、世界遺産のカルカッソンヌ周辺です。Les Hautes Terres,Limoux Celeste 2016(17点)、Domaine Garrabou, Limoux Fontvieille 2016(16点)、Domaie de Mouscaillo, LImoux 2016(16点)。

これらは高くて30ユーロで、10台も多数あります。ビオまたはビオディナミも多く、コスパが良さそうです。一度お試しあれ。