連載コラム

おおくぼかずよの「男女の友情は成立するか?それはさておき日本酒の話」 Vol.01 2017_06_02

はじめまして。日本酒講座を担当しております、おおくぼかずよと申します。アカデミー・デュ・ヴァンの皆様に日本酒の魅力をお伝え出来る日々を嬉しく楽しく過ごしております。このたび、こちらのコラムでも日本酒のお話をさせて頂くことになりました。どうぞお付き合い下さいませ。

さて、皆様は普段、日本酒を飲まれますか?毎日飲むという方から、飲むのはほとんどワインばかりで・・・という方まで様々かと思いますが、最近では、ロバート・パーカー・ワイン・アドヴォケートが日本酒の格付け評価を発表したり、J.S.Aが日本酒に特化した認定制度であるSAKE DIPLOMAを発足させたりと、ワインラヴァーである皆様も「日本酒」という言葉を目にしたり耳にしたりされる機会が増えているのではないでしょうか。国内外で注目されている日本酒、今日はそんな日本酒を取り巻く環境についてお話していきましょう。

まずは国内出荷量から。日本酒の国内出荷量はというと、1973年のピーク時には1766千キロリットルを超えていましたが、現在は600千キロリットルを割り込み、当時の1/3となっています。注目度の高さとは相反して、減少傾向なんですよね。

国内出荷量が減少傾向にある中、和食のユネスコ無形文化遺産登録等を背景に近年、増加傾向にあるのが輸出です。2005年は9,537キロリットルだった輸出数量は2015年には18,180キロリットルと、ここ10年で倍増しています。

また、輸出額で見ると2013年に初めて100億円を突破したことを皮切りに、2014年は115億円、2015年は140億円、2016年は155億円を超え、まだまだ勢いは止まらぬ様子。なお、この数字には訪日外国人の土産物の額は含まれておらず、数字以上に日本酒が普及していると期待されており、政府も、訪日外国人が酒蔵(ワイナリーも含む)等で酒を購入する場合、酒税を免税にする制度の導入し、訪日外国人が「日本の酒」を買い求めやすくすることで、更なる海外での普及を目指しています(2017年10月1日から実施予定)。

続いて、輸出国に関して。現在は60ヶ国を超え、アメリカ、韓国、台湾、香港、中国の5ヶ国で約7割を占めています。日本酒ブームになる以前から市場開拓をされていた関係者の方々の努力もあり、いまや日本酒は日本の農産物輸出の主力に成長しつつあるってご存知でしたか?

斯く言うわたくし、実は、お酒を飲み始めた頃は日本酒がニガテでした。今なら、よくわからない居酒屋で「冷や」「燗酒」としか書かれていない正体不明の日本酒を飲んでいたのですから、そりゃ~ニガテになるよねぇ~とは思いますが。日本酒に目覚めたきっかけは、イベント出展の仕事で行ったイタリア。一緒に出展されていた日本酒ブースで蔵元自らが注いでくれた「大吟醸」というお酒。華やかな香りと繊細な味わいに感動。それまでは仕事を自制して(自制?!)ガンベロ・ロッソのワインブースに入り浸っていた私でしたが、その日からは自制を強化し、日本酒ブースへ。酒蔵の方々とお話させてもらううちに日本酒を通して日本の文化、食の歴史、日本酒が造られる風土に興味が湧いてきました。興味が湧くというより、日本酒について、そもそも日本についてあまりにも知らないことに気付かされたというべきか。力試しにと受けたきき酒師の試験が2003年になります。

それから時は流れ、原材料の研究や醸造技術も進み、私が感動した大吟醸のようなエレガントなタイプの日本酒も、以前に比べれば気軽に楽しめるようになりました。なかにはオーク樽で熟成させたものやワイン酵母で造られたものもあり、バラエティに富んだ美酒がメニューリストや店頭に並びます。元々は神々に捧げられていた神聖な水、神様もきっと最近の酒は旨いね!とおっしゃっているに違いないレベルです。
農学博士の故坂口謹一郎先生は、名著のひとつ「日本の酒」の冒頭で、次のように記されています。「世界の歴史をみても、古い文明は必ずうるわしい酒を持つ」「或る酒を十分に鑑賞できるということは、めいめいの教養の深さを示していると同時に、それはまた、人生の大きな楽しみの一つである」と。うるわしい酒は皆様のすぐそばに。さぁ、日本酒で乾杯!