連載コラム

おおくぼかずよの「男女の友情は成立するか?それはさておき日本酒の話」 Vol.05 2017_12_29

こんにちは。日本酒のおおくぼかずよです。今年も残りわずか、新年に準備は進んでいらっしゃいますか。

一年の節目であるお正月には、歳神様が全てのものに新しい生命を与えるために現れると考えられ、歳神様をお迎えするために様々な行事が行われるようになりました。今日はそれら正月行事の中から「お屠蘇の飲み方の作法」など、日本酒にちなんだお話を。とはいえ、昔々の神々が出てくる頃の話など諸説ありますので、古の人々に思いを馳せながら忙しい年の瀬のひと休みとして読んで頂ければと思います。

「米」
日本酒の原材料である米が豊かに実る日本の美称は瑞穂の国。天孫降臨の際、天照大神はニニギノミコトに民が飢えることがないようにと、高天原に実っていた稲穂をその場で掴みお渡しになられたそうです。なぜ米を祖末に扱ってはいけないのか?それは神から頂いた大切なものであり、特別な力が宿るものと信じられているからです。

新年の歳神様へのお供えものが米から作られる「鏡餅」です。現在のような餅は平安時代からで、ハレの日の食べ物、神仏への供え物とされてきました。鏡開きは歳神様に供えていた鏡餅を下して頂くことで新しい生命を得る祝いごとです。切腹を連想させる刃物は使わず木槌などで割って開きます。

「水」
元日の朝に初めて汲む水を「若水(わかみず)」と言います。この水で歳神様の供え物や料理を作り、口をすすぎ、お茶をたてて邪気を払います。これを井戸や川に汲みにいくのが若水迎えで、東日本では年男の役目(または一家の主)、西日本では女性の場合もあるようです。昨今、若水迎えは一般家庭では行われませんが、水道の蛇口に輪飾りなどをつけたり、水廻りに小さな鏡餅を置いたりします。

「お屠蘇」
屠蘇散という調合された漢方薬を日本酒に浸した薬用酒のこと。蘇(そ)という悪鬼を屠(ほう)るという意味から「お屠蘇」と呼ばれ、元々は中国の風習です。平安時代に伝来し、1年間の邪気を払い延命を願って飲まれます。お屠蘇には飲む作法があり、年少者から「一人これを飲めば一家疾(くるしみ)なく、一家これを飲めば一里病なし」と唱えながら杯をまわし、年長者が最後に飲みます。これは若い生気を年長者に渡すためという意味合いがあります。現代では屠蘇散は薬局でティーパックのように袋に入って市販されています。独特の香りが苦手な方は本味醂で作ってみて下さい。

他にも、祝い箸は両方が細くなっているが片方は神様のためのものであり、神様と共に食事をするという意味なので逆さ箸はいけないとか、お重に盛られたお節料理がデパートで売り出されたのは昭和42 年、永田町瓢亭が日本橋三越本店で予約販売したのが最初と言われているなどお正月話がありますが、続きはまたの機会に。

さて、最後にお正月におすすめの日本酒をご紹介。日本酒の銘柄名には「開運」(静岡)、「来福」(茨城)、「福寿」(兵庫)など新年にふさわしいものが多々ありますが、今回は3銘柄をご紹介します。

【大七 宝暦 純米大吟醸 原酒 雫酒】
大七酒造/福島県 720ml ¥8,100(税込)

「宝」の語源は「田カラ」という説をご存知ですか。田で育まれる米が宝そのもの。そんな「宝」の文字が銘柄に入っているのが生酛造りの名蔵、大七酒造が醸す「宝暦」。純米大吟醸原酒の雫酒です。リーデル社が大吟醸グラスを選定する際、何十もの候補の中から、最後は宝暦の試飲によって最終的に今のグラスが選ばれたという話は有名です。エレガントでありながら、生酛ならではのしっかりしたボディ。是非、大吟醸グラスでお楽しみ下さい。

【満寿泉 純米大吟醸 干支ボトル スペシャル 2018】
桝田酒造店/富山県 520ml ¥5,940 (税込)

オリジナルガラス瓶に毎年の干支が細工され、コレクターもいる人気の満寿泉の干支ボトル。ボックスに描かれた戌(イヌ)の表情もとてもチャーミングでギフトにもおすすめです。心地よい穏やかな吟醸香と山田錦の上品な味わい。10~12℃、白ワイングラスでどうぞ。

【伊根満開】
向井酒造/京都府 720ml ¥1,900(税込)

伊根湾を囲むこの地区独特の伝統的建造物である「伊根の舟屋」で知られる京都丹後半島の伊根町にある日本で一番海に近い酒蔵です。ワインのような鮮やかなロゼ色は、野生稲の赤米(古代米)のアントシアニン由来。プルーンやブラックチェリーを思わせるしっかりとした酸味と甘味が特徴で、お節料理なら紅白なます、黒豆などに合わせてみて下さい。最後にほんのりと感じる苦味もあり飲み飽きしません。アルコール度数も低めなので、日本酒ビギナーの方にもおすすめです。

本年は日本酒コラムをお読みいただき、心より御礼申し上げます。来年は講座でもお会い出来ます事を楽しみにしております。どうぞ皆様、佳い&酔い年をお迎え下さいませ。