連載コラム

連載コラム:佐藤くらら陽子のブルゴーニュ日記 Vol.10 2016_11_30

木枯らしが吹くブルゴーニュより、こんにちは、佐藤くらら陽子です。

収穫が終わった途端、ブドウの葉は黄金色に変わり、コート・ドール(黄金の丘)
のグラン・クリュ街道を黄金色に染め、一番美しい秋の風景となります。
それもつかの間、1週間足らずで枯れ葉となり、すぐに葉を落とし、今は枝だけ
の茶色一色の寂しい風景へと変わりました。畑では冬の選定が始まり、枝を燃や
している畑からは煙が立ち上り、ブルゴーニュの風物詩となる冬の情景を目に
します。

私は、シモン・ビーズでの収穫を終えてから、醸造技術師のディプロムを取得
するためにディジョンにあるブルゴーニュ大学に通っています。
昨年は主に畑での仕事と醸造を中心に勉強し、ブルゴーニュの1年を経験して
きました。
そして、今は白衣を着て、大学の研究室で試験管を片手に、ワインを分析して
います。
クラスメートは、ブルゴーニュだけではなく、ジュラ、シャンパーニュ地方など
の醸造者や、ワインジャーナリスト、インポーター、研究者など色々な職種を
持つ総勢20名のクラスです。(私が若い位になる、かなりの高年齢層です!)
外国人は私を含め、日本人と中国人の3人のみ。
言葉の問題も大変ですが、文学部出身の私にとって、研究室で必要となってくる
化学式が理解困難。
化学記号や、計算式が出てきた時点で、落ちこぼれ状態です。
この先、ディプロムまでかなり遠い道のりになりそうです。

さて、11月はワインのイベントが沢山あるブルゴーニュです。
第三週目の木曜日のボージョレーヌーボーの解禁に続き、ボーヌではワインの
お祭り「栄光の三日間」が行われます。
この年に一度のお祭りの準備で忙しいボーヌの街にボージョレーヌーボーのポスタ
ーは張られることはなく、新酒もスーパーの入り口に置かれているものを目にする
くらいです。
ワインバーでもボージョレーヌーボーを飲ませる店や解禁日のお祭りをする店も
ほとんどなく、むしろ、ボーヌのお祭りの前夜祭を楽しむ客で盛り上がっています。
ヌーボー解禁一番乗りの日本のお祭り騒ぎとはかなりの温度差を感じます。
(むしろ、解禁を知らない人が多いくらいです)

さて、「栄光の三日間」のお祭りです。
昨年はテロの直後という事もあり、自粛モードのお祭りでしたが、今年はファン
ファーレと共に盛大に始まりました。
中世の民族衣装を着て、ワインの守護神サン・ヴァンサンをのせたお神輿を担ぐ
行列に続き、鼓笛隊やダンサーのパレードが街中を練り歩きます。
街の中心広場には、生カキや卵のワイン煮や、エスカルゴ、シャルキュトリーなど
のブルゴーニュ料理の屋台が並び、ワインのスタンドやホットワインを売っている
所は行列がたえません。
街中のバー、レストラン、ワインショップの前も即席ワインバーが用意され、街中
がワインの香りに包まれます。
市外の見本市会場では3000種にも及ぶワインのテイスティング・イベントが開かれ、
ボーヌマラソン(もちろん給水所にはワイン有)や、ボトルのコルク抜き大会など
が行われ、至る所で音楽が鳴り響きます。
夜はイルミネーションが華やかに飾られ、歴史的建造物ではプロジェクションマッ
ピングが夜中ついています。
普段は静かなボーヌの街が一番盛り上がるのが、このお祭りです。

そして、日曜日のメインはオスピス・ド・ボーヌのオークションです。
今年のブルゴーニュは4月の霜、6月の長雨の天候被害を受け、前評判もあまりよく
ない状態でしたが、夏の成熟時期から収穫前にかけて猛暑と呼ばれるほどの晴天と、
タイミングの良い降雨量のお陰で、被害を免れた場所の畑は前年と同様の収穫を
行う事ができました。(もちろん、ブルゴーニュ全体的としては収穫量は減少です)
なんと、今年のオークションには昨年に比べ21樽も多く、赤ワイン470樽、白ワイン
126樽の合計596樽がオークションにかけられました。
競りの結果は過去最高値を付けた昨年に比べ、赤ワイン-23.26%、白ワイン-35.94%、
そして1樽平均-26.34%と減少。
しかし、この数字は2014年よりは高値となります。
そして、この結果より、昨年2015年がいかに高額で競り落とされたかを証明する数字
となりました。
わたしは、午前中にオークションにかけられるワインを試飲した後、昨年同様シモン・
ビーズの当主の千砂さんの横でその動向をドキドキしながら見ていました。
やはり昨年に比べ、数字の登りも静か、樽によっては昨年の半額近くの値が付けられ
るものもあり、ここでも、今年の天候不良による被害の大きさを感じました。
千砂さん曰く「これが通常のオスピス。昨年が異常だった」とのこと。
自然が相手ゆえのワインです。良い年、不作な年があって当然です。
今後2~3年の動向が見逃せなくなりました。
そして、オークションの最後はマールとフィーヌの競りになります。
しかし、14時過ぎの開会式から、21時過ぎまで会場に残っている人も僅か。
競り落とす人も3~4人と限定されているようで、最後のフィーヌはあっと今に競り落と
されました。その後、閉会式もなく、あっさり解散。撤収作業に移っていきました。
このあっさりした所が、ブルギニヨン気質です。
だいぶ慣れてはきましたが、いつも拍子抜けをしてしまいます。

栄光の三日間の最終日はムルソー村で行われるポレという大昼食会です。
醸造家達がワインを持ち寄り、大いに飲み、大いに食べ、歌い、その年の苦労をねぎらう
打ち上げパーティーを行います。
ものすごい量のお料理とワインが振る舞われるそうで、想像するだけでも怖いですが、
私もいつかは、グルマンなブルギニヨンに混ざって参加してみたいと思っています!

では!また