連載コラム

高橋佳子のセンス・オブ・プレイス_Vol.01(2019_01_04)

新年、明けましておめでとうございます。
2019年第一号のメルマガコラムを担当させて頂けることになり、心より嬉しく思います。
昨年は人生で最も多く海外へ出向いた一年でした。
イタリア、ポルトガル、カリフォルニア、オーストラリア、南アフリカ、カナダ。
かれこれ20年近くワインを生業としていますが、
産地を訪れ、葡萄畑を歩き、ワインが生まれた場所で、
それを造った人と一緒に味わうことほど有意義な時間はありません。
ワインの学びにおいて「テロワール」とは何か?
最初に理解するべき大切な概念ですね。
英語ではこれを「Sence of the Place」と表現することがあります。
直訳すると「その場所の感覚」
私が訪れたワイン産地の感覚=センス・オブ・プレイスを
ワインを紹介しながら読者の皆さまに伝えられたらと
このコラムのタイトルにきめました。

vol.1でご紹介するプレイスは、オーストラリアの「タスマニア」です。
昨年は2回渡豪し、4月上旬と8月中旬にタスマニアに行ってきました。
タスマニアは、オーストラリアで最も冷涼な気候をもつ産地です。
その冷涼な気候を生かし、主にピノ・ノワールとシャルドネが栽培されていて、
プレミアムスパークリングワイン用の需要が増しています。
南半球は日本と季節が逆なので、タスマニアでは4月上旬ごろがちょうど葡萄の収穫時期。
日中の日差しは強いですが、空気がとても澄んでいて朝晩の気温はグッと低くなります。
冷たい海に囲まれたタスマニアでは、
葡萄はゆっくりと、風味と酸味を蓄えながら成熟します。
8月はというと、春はまだかと待ちわびる冬。
州都ホバートは、どんよりと曇りや雨がちで、とても寒かったです。
標高1271mのマウント・ウエリントンは雪化粧でした。
ホバートから車で東へ30分ほどのコール・リヴァー・ヴァレーに、
タスマニアを代表するプレミアム・スパークリングワイン
「ジャンツ Jansz」の葡萄畑を訪問しました。

小高い丘の斜面に植えられた、まだ若い葡萄樹に、海からの冷たい風が吹き付けます。
ジャンツは、シャンパーニュのルイ・ロデレールとタスマニアのヒームズカークの
ジョイント・ヴェンチャーとして1986年に誕生しました。
現在は、南オーストラリア州のバロッサに本拠地を構える
ヒル・スミス・ファミリーが所有しています。
シャンパーニュで例えると、ネゴシアン・マニピュランの生産形態で、
タスマニア北部のパイパーズ・リヴァーエリアにも葡萄畑を所有し、
契約農家からの葡萄の供給も得ています。
収穫した葡萄をプレスし、本土へ輸送、醸造しています。
ですが将来、このタスマニアにワイナリーを設立予定で、
葡萄畑の敷地内にはその建設準備が進められていました。
「ハウス・オブ・アラス House of Arras」もオーストラリアを代表する
スパークリングワインブランドですね。
フラッグシップのE.J. カー・レイト・ディスゴージド2003は、
国内外の代表的な品評会で最高評価を得ている実績を誇ります。
10年間の瓶内熟成を経て、複雑みを育んだプレステージキュヴェです。

タスマニアのワインは、高い酸味とクリスタルピュアな果実風味が特徴。
まだ飲んだことがない方は、ぜひ、一度お試しください。
その冷涼な気候、センス・オブ・プレイスを感じて頂けると嬉しいです。
最後まで読んで頂きありがとうございました。