連載コラム
遠藤利三郎の「読むワイン」~利三郎文庫便り Vol.15(2019_03_15)
「ブルゴーニュ公国の大公たち」を読む。
さすがジョゼフ・カルメットによる古典的名著、
読み応えのある力作だ。
そもそもブルゴーニュの歴史を語る時、
特に百年戦争のあたりが難解。
フランス、イギリス、そしてブルゴーニュ公国が
三つ巴の戦いを繰り広げ
その他諸勢力が複雑に絡み合い、
そのくっついたり離れたりが
いまひとつ理解できていなかったので
一度しっかりと勉強したかった。
絶頂期4代に渡るブルゴーニュ公を中心に物語は進む。
暗殺し暗殺されのオルレアンと暗闘、アルマニャック派の登場、
ヘンリー5世との共謀、ジャンヌ・ダルク、
そしてまさに坂道を転がるかのような凋落までを描く。
(オスピス・ド・ボーヌを設立したニコラ・ロランが
結構政治的に活躍している!)
とてもしっかりと書かれた硬派な本だが
翻訳も良く難解というほどではない。
時間をかけてメモを取りながら読み進むべき一冊。
書名:ブルゴーニュ公国の大公たち
著者:ジョゼフ・カルメット
出版社:国書刊行会
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「歴史の中のワイン」を読む。
予々疑問があった。
プイィ・フュメというAOC名は
なぜ「産地名」+「品種名」なのか。
ご存知の通り
フランスでは産地名がワイン名となるのが原則。
アルザス地方やミュスカデ、カベルネ・ダンジュなど、
品種名がAOC名に付くのは例外となる。
そしてプイィ村のプイィ・フュメも。
(フュメはブラン・フュメのことで
ソーヴィニョン・ブランの別名だ。
ロバート・モンダヴィはそれをヒントに
フュメ・ブランという名前を思いついたのだろう。)
この疑問に対する私の推理はこうだ。
元来プイィ村はシャスラから白ワインを造っていたのではないか。
だからこそ村の正式名称であるプイィ・シュル・ロワールというAOCは
シャスラから造るものと規定されている。
そこに後からソーヴィニョン・ブランが移植された。
そのため、従来のプイィ村とは異なる味わいになってしまったワインには
新参の品種名を名乗らせることにより
その違いを明確にしたのではないだろうか、と。
この本を読んでいて、おっと思わせる記述を見つけた。
ボルドーからソーヴィニョン・ブランが
サンセール村とプイィ村に移植されたとある。
しかもそれはフィロキセラ後と意外と新しい。
これだ!!
だからこそプイィ・フュメというワイン名が生まれたに違いない。
書名:歴史の中のワイン
著者:山本博
出版社:文春新書