連載コラム

連載コラム:伊東道生の『<頭>で飲むワイン 』 Vol.37 2014.05.20

ワインと数字

 今回は、RVF誌のネット記事からワインにまつわる数字です。ちなみに、数字は、フランス語で「シッフルchiffre」といいます。旧聞ですが、ボランジェとアンジェラス(サンテミリオン)を飲んでいた『カジノロワイヤル』で、ダニエル・クレイグ扮するジェームズ・ボンドの敵は、ル・シッフルでした。カードとお金の数字につよい悪役というところでしょうか。
 
さて、ワインと数字の第一は、雇用者数です。フランスでは、直接・間接を含め、ワイン関連での雇用者は55万8000人。そのうち、14万2000人が葡萄栽培者、間接的な雇用者は30万人(樽作り職人、金物職人、配送、グラスやコルクの作り手、サービス業、銀行保険関連など)。組合や税金関連、研究者などで1万5000人、ネゴシアンは3万8000人。季節労働者は2万1000人。酒屋(カヴィスト)が、1万700人。葡萄生産協同組合のサラリーマンが8300人、ワイン配給に1万5000人、官公庁5000人、ソムリエは3000人だそうです。
 単純に比べられませんが、日本の職種別人口のうち、農林漁業が240万、サービス業が760万 販売従事者が880万ほどです。日本の人口が1億2000万、フランスを6200万とすると、日本とフランスでは人口比が2対1。どうなのでしょう。少なくともよく言われるのが、日本のソムリエの数の多さです。2万人近くいます。「日本ソムリエ協会」の統計では、マスターソムリエが56人、シニアソムリエが1829人、ソムリエが18361人です。アドバイザー関連では、シニアが953人、ワインアドバイザーは12024人、シニアワインエキスパートが32人、ワインエキスパートが9969人。日本のワイン消費量などを考えると
ちょっと多すぎるくらいですね。その割に的確なアドバイスがあまりないような。資格好きで、あまり実効性がないような気がしないでもありません。

 フランスの話にもどります。
ワインの輸出は、76億ユーロ、航空産業に次ぐ二位の部門で、香水や化粧品を含む化学製品がそれに続く。農産品としては一位。ただし、日本貿易振興機構(JETRO)の統計では、原子炉・ボイラー・機械類 50万ユーロ、航空空機および宇宙飛行体42万、次いで自動車、電気機器、医療用品、鉱物性燃料、プラスチック。そして飲料・アルコール・食酢がきて、1400万ユーロとなっています。こういうのは、統計の処理の仕方で変わりますからね。
フランスは地球上の16%、4110万ヘクトリットルのワインを生産しています。1ヘクトリットルは、100リットルです。ですので、411万キロリットルということにもなります。生産されたワインは、88%がスーパーなどの大型流通店で売られています。フランスには、カルフール、モノプリ、オーシャンなど大きいスーパーがいくつもありますから。専門店では7%、直販は5%。今でこそ、日本でもスーパーやコンビニに売っていますが、お総菜と一緒に買うのでしょうかね。なんとなくおにぎりや和総菜とはミスマッチの感はぬぐえません。
そして、ラングドック、アキテーヌ(ボルドーがあるところです)プロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域圏(PACAと略します)、シャンパーニュがワイン生産で、最も重大な四つの地域だそうです。ちょっと意外な評価ですが、おそらく生産量に関係するのでしょう。
またフランスでは、世界のワインの14%と、トップの消費量をほこっています。アメリカでは290億ヘクトリットル、イタリアは、230億ヘクトリットル。フランスは300億ヘクトリットル(30億キロリットル)以上。日本では29万リットル、一人あたり、年間2リットル強なので、問題外です。まだまだ「のびしろ」はあります。所帯のうち85%、2300万ほどの所帯でワインが消費されています。毎日平均で住人一人あたり1,3杯を飲んでいます。それでもフランスでは1975年には住民一人あたり100リットルが、2012年には、50リットル弱まで下がっています。

フランスで消費されている10本に9本はフランスワイン。これに対して日本では、65%ほどが輸入物です。消費するワインの60%が赤で、23%がロゼ、17%が白です。ロゼの消費量が多く、これも日本と違います。日本でロゼは、単純に安物扱いですから。そういえば、世界で一番植えられている葡萄は、カベルネ・ソービニオンだとか。
 ぶどうの作付面積は、75万5000ha。ぶどうは、世界中で1番生産量が多い果物で、少し古いですが、平成17年で6,653万トンになります。
 ここで、日本の数字をあげておくと、ぶどうの産出額は993億円。栽培実農家数は、4万1千戸で、山梨県、長野、山形、岡山、福岡が上位五位、結果樹面積は、1万8,900ha、収穫量は20万9,800トンで、上位5県で収穫量の約6割を占めています

またフランスワインの、57%がAOCです。AOCも拡大していきますので、試験対策も大変です。34%がIGPワイン、10%が地域表記なしのテーブルワインです。
 世界で消費されるワインの63%が、ヨーロッパ産。23%がアメリカ産、アジアやオセアニアで12%。オーストラリアワインのおかげで比較的多いのでしょう。アフリカは2%。南アメリカだけでなく、北アフリカでも葡萄栽培とワイン作りはすこし活発になっていますが、イスラム文化圏のひろがりとの兼ね合いになるのでしょう。中国は、外資もはいって、これから伸びそうです。
ワイン輸出についても、金額として、フランスは世界一。30%が輸出され、そのうち半分以上、54%ヨーロッパ。上にも書きましたが、2013年には輸出額は、76億円にのぼります。
ワイナリーを訪れるなどのエノツーリズムについては、1万のカーヴに、年間1000万の客が訪れ、そのうち39%が外国人。31のワイン博物館に年間100万人が訪れるということです。2009年以降制定されたラベル“Vignobles & Découvertes”の36の地域が主要な場所となっています。
この認証ラベルは、取得すれば3年間有効で、例えば、シャブリのそれによると、こうなっています-この認証ラベルは、質のいいサービスでワインツーリズムが楽しめる場所を、一般の方が簡単に識別できるようにしたものです。認証を受けるには、ワイン産地を訪れる人が旅行計画を簡単に組み立てられるような観光要素(宿泊、レストラン、カーヴ訪問、博物館、イベントなど)を揃えなければなりません。
ワイン生産だけでなく、消費のさまざまな形まで、システマチックにできあがっています。