連載コラム

連載コラム:伊東道生の『<頭>で飲むワイン 』 Vol.49 2015.07.24

プリムール2014 フランス全国版

前回ボルドー・プリムール2014について書きましたが、RVF誌のプリムール評価
をあらためてみると、2014年はまさにソーテルヌの年となっています。
Chateau Coutetをはじめ、Fargue, d’Yquemの三つが20点満点、Climens,
Raymond-Lafonがそれに続き、13ものシャトーが18点以上です。他の地域では
18-19点が最高でLas CasesとDucru-Beaucaillou(Sain-Julien)を除いては、ペザ
ック・レオニャンとポムロールが高評価です。
 さて、同じ号(RVF no.592)では、ボルドーだけでなくミレジメ2014年の1500
のワインを選出していますので、今回はそれを一部紹介します。もしプリムールで
買うなら、あるいは2、3年後に2014年物がでてきたときの参考にしてください。
 全般として2013年が病気の発生と季節の終わりの雨のために大急ぎの収穫であっ
たのに対し、2014年は遅摘みの年となった。9月の最初にインディアン・サマーが
訪れ、葡萄はゆっくりと熟成した。アルザスのリースリング、メドックのカベルネ、
ローヌのシラー、ルーションと2014年はばらつきのないできあがり。果実味、十分
な酸味、コンセントレーションがある。ただ葡萄の出来からいってあまりプレスを
かけないこと、樽熟させすぎないことが留意点。
 総じて、2014年は果実味のきわだつ年で、若くして飲めるし、軽めで新鮮、アル
コール度も充分。なかでもロワールが最高の気象条件だった。とくに赤がよく、繊細。
白もまた香り高く楽しみなものとなっている。ボルドーはメドックのカベルネが熟成
を示している。ここも果実味があり、柔らかい。保存してもよくなるだろう。右岸
のメルロは、複雑さは欠いているが、快適なワインになっている。ブルゴーニュでは
コート・ド・ニュイで魅力的な赤ができ、シャブリからマコンまでシャルドネはきわ
めてうまくいった。ローヌのシラーはアロマチックで重いというよりもエレガント。
テロワールの気高さを反映して複雑なものになっている。ただ9月15日からの大雨
で偉大なるミレジムにはならなかった。プロヴァンスやラングドックでは軽くて
エレガントな、果実味あふれるワインが、またコルシカにとってはきわめてよい年
となった。RVF誌の全体評からすると、2014年は果実味、飲みやすさがキーのよう
です。
 収穫は平均を下回ったが、それは気候と、アジアからやってきたショウジョウバエ
のせいである。一部では、このためにかなり葡萄に被害が出ている、とくにアルザス。
さらにブルゴーニュやジュラ、ボルドーも。
 ボルドーは除いて、白やロゼ、果実風味の赤は、今年の夏以降手に入れることが
できよう。価格もお手頃にはなってきた。
 ということで、さっそくおすすめワインです。

マグナムで買うべき10のワイン
Domaine Albert Mann, Alsace Riesling grand cru Schollsberg(白)
Chateau des Jacques, Morgon Cote de Py
Chateau Gloria, Saint-Julien
Maison Josepu Drohin, Beaune 1e cru Clos de Mouches (白)
Domaine de la Vougeraie, Corton Le Cros du Roi
Chateau de Pibarnon, Bndol
Domaine du Colombier, Hermitage
Le Clos d’Un Jour, Cahors Un Jour sur Terre

2014年に生まれた子供のために買うべき10のワイン
Chateau Ausone, Saint-Emilion
Domaine Bart, Chanbetin Clos de Beze
Domaine Confront-Coteditot, Vosne Romnanee Les Duchot 1er cru
Maison Louis Jadot, Pommard 1er cru Les Rugiens Bas
Domaine Marc Colin, Montrachet (白)
Domaine Tempier, Bandol Cabassaou
Domaine Huet, Vouvray Le Hau-Lieu (白)
M.Chapoutier, Hermitage (白)
Chateau Rayas, Chateauneuf-du-Pape

 ここからいくつかの地域から得点の高いものを拾っていきます。
 まずアルザス。収穫量は少なかったが、リースリングが素晴らしい。収穫量の
少なさは、前述の気候とショウジョウバエのせい。この蠅のせいでゲヴルツトラ
ミネールやミュスカはかなりの影響。18点以上は、いずれもリースリングのグラ
ン・クリュで、Albert Boxler, Albert Mannというおなじみのドメーヌのものです。
 果実味という特徴はボジョレーにも現れているようで、全体的に比較的高い点が
付いていますが、Cote de BrouillyのChateau Thivin, Jean-Narc Laforest,
Laurent Matrayが18点以上、Morgonでは、Chateau des Jacques, de Marrans,
Lucien Lardy。Moulin-a-VentではNodia & Thierry Janinが19。それにGerard
Charvet, Le Nid-Famille Largetが続きます。比較的早く出荷されると思うので、
いいボジョレーが
2、3年後には飲めそうです。
 ブルゴーニュでは、まずシャブリが高得点。Jean-Paul & Benoit Droin,
William Fevreがカーヴで保存すべきシャブリ・グラン・クリュ。そして極めつけ
はCote de Nuitsの赤。実に25のワインが18以上。トップの高得点はDRCのロマネ
・コンティ、ラ・ターシュ、ロマネ・サン・ヴィヴァン、それにG.Roumierと
la Vougeraieのミュジニーです。いずれにしても有名どころのドメーヌの看板ワイ
ンのほとんどが「買い」です。  
 一方Beauneでは、白の出来がよく、Comtes Lafon(Montrachet),
Sauzet(Chevalier-, Batard-Montrachet), Marc Colin(Montarachet),
Jean-Claude Bachelet(Bienvenues- Batard-Montrachet),
Hubert Lamy(Criot-Batard-Montrachet), La Vougeraie(Batard-Montrachet,
Bienvenues- Batard-Montrachet)が18点以上。コート・シャロネーズの白、そして
マコンの白も18点こそありませんが、かなりの得点ですので、ブルゴーニュの白も
「買い」です。
 コルシカに関しては、赤にとって偉大なるミレジム。ジュラは天候と蠅による厄介
をかろうじてやり過ごせた。ラングドックは繊細さが際立つ。評価の高いロワールの
赤は若くて飲めるが保存熟成もOK.買いだそうです。白も高評価です。一方、ルーシ
ョンはいままでになかったような口当たりの良さで、赤も白も控えめなアルコール度。
フィネスと新鮮さで性格づけられた偉大なミレジメ、とこちらも高評価。
 プロヴァンスでも果実味がキーワードで、カシスの白とバンドールの赤が高評価。
ローヌではコート・ロティとサン・ジョセフがたしかなものだが、赤も白も新鮮で軽
く仕上がっている。平均的な出来というところでしょうか、上述のようにローヌは傑
出したミレジメにはならなかったようです。
 サヴォワでは固有種Mondeuse (モンドゥーズ)の出来が素晴らしく、赤は魅惑的
なものになっている。Les Fils de Charles Trosset, Fabien Trossetはなんと10-13
ユーロにもかかわらず18点越えです。その他
のドメーヌもかなりの高得点。
 最後に南西地区。赤は早飲み。白は保存というわかりやすいキャッチフレーズガイ
ヤック、カオール、フロントンは新しい世代の栽培家のおかげでタンニンと果実が心地
よく、ジュランソンとイルーレギの白はかなりの出来となっている。

 以上が2014年ミレジメの概略です。はたして実際にワインが出てきたときに、この
評価通りになるでしょうか。楽しみです。もっともニュイの赤などは、このくらいの
高評価ですと、三十年くらい先に飲み頃でしょう・・生きているかなあ。