連載コラム

連載コラム:伊東道生の『<頭>で飲むワイン 』 Vol.54 2015.12.18

テロをやめてシャンパーニュを飲もう

パリのテロはまだ記憶に生々しいですが、痛ましいことに葡萄畑にもテロリズム
です。
RVF誌によると、グラーヴ(Landiras)のLoicとAnnaのPasque夫妻の
Liber Paterです。
11月11日葡萄畑を見回りにきたロイック氏は、多くの葡萄の樹がはさみで切られ
ているのを発見し、愕然となります。
 このドメーヌは知る人ぞ知る?ところです。
ボルドーで最高値のワインと言えば、ペトリュスかと思います。
RVF誌のワイン・ガイド2016で、ペトリュスは2012年が1500ユーロですが、
Liber Pater の2010年の赤も白もその倍の3000ユーロ(Graves)となっています。
ただしGraves Clos de Landirasになると50ユーロです。2006年が初リリース。
赤は2ha カベルネ70%、メルロ30%、白は0.75haで、セミヨン100%。
年間3000本がマックスの希少ワインです。
 記事によると、ビオ栽培をする2.5haの畑にわたるこの蛮行で被害にあったのは、
カベルネ・フラン、メルロ、プティ・ヴェルド、さらにここでロイック氏が試みて
いる貴重種、フィロキセラ以前の種で、失われてもはや味も知らないtarnais と castet。
ボルドーやフランスの研究所との協力で、最初の収穫をむかえるところでした。
ただ、3年から5年の若い葡萄の樹は、2016年には、天候が良ければ実をつける
だろうとのことです。
 殺伐とした話はおいて、時節はクリスマスと年末。
というわけでRVF誌は恒例のシャンパーニュ特集。
 以前、2013年の12月号(No.577)で、RVF誌はシャンパーニュ・メゾンのランク
付けをおこないました。
1位のルイ・ロデレールから50位のフランケンVrankenまでの50メゾンです。
1位のルイ・ロデレールには、「シャンパーニュの<エルメス>」、
2位のポール・ロジェには「エレガントな泡のメトロノーム」、
3位のボランジェには「魂を失わずに成長」などと、派手なキャッチフレーズ
付きでした。
「シャンパーニュの新しい星」 これはどこでしょう。6位のジャクソンです。
「再解釈された偉大な古典主義」 9位のドゥーツです。
「シャンパーニュのきらめくバロック」 12位のペリエ・ジュエです。
「ピノノワールの新しい波(ヌーベル・ヴァーグ)」 13位のフィリポナ。
「ブラン・ド・ブランのチャンピオン」 皆さんは、たぶんあそこだろう、
と想像しますね。ちがいます。ルイナールです。20位。
サロンは、「マロラクティック発酵なし(sans malo)のシャルドネのお手本」で、
8位です。
そして意外にも「我々を目覚めさせるシャルドネ」として
11位にシャルル・エイドシックが入っています。
 メゾンの評価としてはなかなかおもしろいものでした。
 さて、今回はこれをうけて、いわゆるRM系のシャンパーニュの格付けです。
題して「葡萄栽培家の100の偉大なシャンパーニュ」です。
アッセンブラージュを基礎として、スタンダードなシャンパーニュをつくる
メゾンに対してテロワールを表現する栽培家たちのシャンパーニュ、
350の中から100のキュベをセレクトです。
ドメーヌとしてはメゾンと同じく50をランク付けしています。
 結論から言うと、メゾンと違い、あまり意外性はなくほぼ世間で考えられている
とおりです。あれ、これは入っていないの?というのはありますが。
 今回はキャッチフレーズめいたものもなく、年間生産本数(大手メゾンは100万本
単位ですので、それと比較する意味もあるのでしょう。)と代表的キュベの短い紹介
という、
記事としてはいたってまじめなデギュスタシオンの記事で、その分ずいぶん華やかさ
には欠けています。
とりあえず、1位から順番に。20位まではこうなります。
1 Jacque Selosse 5万7千本 
(ここは異常な値段になっていますね。20年ほど前にはパリや、日本でもけっこう
普段飲みできたのですが。あの頃が懐かしい・・。)
2 Egly-Ouriet 10万本 (この二つは妥当なところでしょうか。)
3 Agrapart & Fils 9万本 
(ここは RVF誌でいつも高評価をされています。日本での人気はいまひとつですが。)
4 Larmandier-Bernier 13万本 (思ったよりも高評価です。値段もお手頃ですし。)
5 Georges Laval 1万本
6 Francois Bedel 6万本
7 Benouit Lahaye 3万8千本
8 Domaine Peters 17万5千本
9 Francis Boulard et fiile 2万5千本
10 Bereche et fils 9万本 
(このあたりは、日本ではあまりそこいらでは見かけないものです。なかなかシブイ)
11 Pascal Doquet 7万5千本
12 Veuve Fourney & fils 19万本
 (意外な高評価。ここも手頃な値段です。そういえば、個人的にここのジェロボアーム
を買いましたが3万円をきっています。)
14 Gonet-Medeville 9万本
15 Laherte Freres 11万本
16 Jean-Baptiste Geoffroy 13万5千本
17 Marguet Pere et fils 7万5 千本
18 Pierre Paillard 9万5千本
19 Franck Pascal 3万本
20 Eric Rodez 4万5千本
 ここらあたりはADVでも見かけるもので、それほど高価格でもありませんね。
 このドメーヌ評価とは別にキュベの評価もあります。
トップの18.5/20点をとったのは、次の三つです。
Egly-Ouriet, Brut nlamc de noir Grand cru
Pascal Douquet, Le Menisl-sur-Oger Gran cru 2005
Larmandier-Bernier, Extra-Brut Les Chemin d’Avize Grand cru 2010
 またシャンパーニュ地方(ご存じのように、Champagneと同じ綴りでも女性名詞
扱いでは地理・行政区分、男性名詞は飲み物になります。)は、COP21をうけて
「気候、葡萄際材、持続的発展、責任を持って参加実行するシャンパーニュ」の
スローガンのもと、2050年にかけて大幅なCO2削減を打ち出しました。
たしかに気候変動もテロとならぶ危機的問題です。